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クローン病の特徴と働くうえでの悩み・支援・相談先をまとめて解説

クローン病と診断されたとき、多くの方が最初に感じるのは「この先、どうやって生きていけばいいんだろう」という漠然とした不安ではないでしょうか。特に発症が10〜20代に集中しているこの病気は、学業や就職活動のさなかに発症することも少なくなく、「将来の仕事はどうなるんだろう」という問いと否応なく向き合わされます。

このページでは、クローン病という病気がどんな特徴を持つのかを整理しつつ、仕事を続けるうえで直面しやすい困りごと、対処の工夫、そして相談先となる支援制度まで、できるだけ具体的にお伝えします。

クローン病とはどんな病気か

クローン病は、1932年に米国の医師クローン博士が初めて報告したことからその名がつきました。消化管に慢性の炎症や潰瘍を引き起こす病気で、最大の特徴は「口から肛門にいたる消化管のどの部位にも炎症が起こりえる」点にあります。

特に発症しやすいのは小腸の末端部分(回腸末端)と大腸ですが、食道・胃・十二指腸・口腔内にまで病変が及ぶこともあります。

また、潰瘍性大腸炎が炎症を腸の粘膜に限っているのに対し、クローン病は腸壁の深い層まで炎症が及ぶのが特徴で、その結果として腸が狭くなる「狭窄」、腸に穴があく「穿孔」、腸と他の臓器や皮膚がつながってしまう「瘻孔(ろうこう)」、膿がたまる「膿瘍」といった合併症が生じることがあります。

日本国内の患者数は現在約7万人と推計されており、発症は10〜20代に多く、男性に多い傾向があります(男女比はおよそ2対1)。原因はまだ解明されておらず、遺伝的な素因に食事・腸内細菌・免疫異常などの環境因子が複合して発症すると考えられています。

国の指定難病(指定難病96)に認定されており、医療費助成の対象となっています。

主な症状——腹痛・下痢に加えて肛門病変が多い

クローン病の代表的な症状は腹痛と下痢です。診断時に7割の患者さんにこれらの症状が見られます。

さらに、発熱・体重減少・全身倦怠感・貧血なども現れることがあり、長期にわたる栄養の吸収障害が体力の低下を招くこともあります。

潰瘍性大腸炎と比べると血便の割合は少ないですが、クローン病の特徴として「肛門病変」が多い点が挙げられます。

痔ろう(肛門の周囲に膿がたまったり、トンネルが形成される状態)、肛門周囲膿瘍、裂肛などの肛門部の症状を抱える患者さんが多く、実際に痔の治療で受診したところクローン病が発見されるケースもあります。この肛門病変は、座ることの痛みや日常の排泄への影響を通じて、仕事のパフォーマンスに直結する問題になりやすいです。

腸管以外にも関節炎・皮膚症状・眼の炎症(虹彩炎など)・口内炎といった腸管外合併症が現れることもあります。

活動期と寛解期を繰り返す慢性疾患

クローン病は、炎症が強まる「活動期」と症状が落ち着く「寛解期」を繰り返しながら、長い経過をたどります。完治する治療法はまだなく、治療の目標は寛解期をできるだけ長く維持し、炎症による腸のダメージの蓄積を防ぐことにあります。

治療は薬物療法が中心ですが、クローン病独自の特徴として「栄養療法」が重要な位置を占めます。脂肪分を極力含まない成分栄養剤(エレンタール等)を使った栄養療法は、腸を安静に保ちながら必要な栄養を補う方法で、薬物療法と並んでクローン病の寛解維持に有効とされています。

また、クローン病では喫煙が入院や手術のリスクを高めることがわかっており、禁煙が強く勧められます。

クローン病を抱えながら働くうえでの困りごと

若い時期の発症が、学業や就職活動にも影響する

クローン病の発症ピークは10〜20代です。これは、高校・大学生活、就職活動、社会人としてのスタートという、人生のなかでも特に重要な時期と重なります。

入退院や長期の療養で学業が遅れる、就職活動の時期に体調が安定しない、就活中に病気を開示するかどうかで悩む——こうした状況は、クローン病を抱える若い世代に特有のつらさとして存在します。

IBD(炎症性腸疾患)患者さんを対象とした調査では、就職・転職活動中に発症していた方のうち、半数以上が「就職・転職活動に苦労した経験がある」と回答しており、クローン病の患者さんほど「なかなか就職先が決まらなかった」などの困難を経験する傾向があることも報告されています。

消化管の広範な炎症による体力・栄養面への影響

クローン病は消化管全体に炎症が及ぶため、栄養の吸収が低下しやすく、体重減少・貧血・低栄養状態になりやすいという特徴があります。これは体力の低下に直結し、「以前はできていたことが、発症後はこなせなくなった」という感覚を生みやすいです。

フルタイムでの勤務を続けることはもちろん、通勤や仕事中の集中力の維持も難しくなることがあります。体の内側での栄養不足は外からは見えにくく、「見た目は変わっていないのに」と思われがちな点も、この病気の難しさのひとつです。

トイレと肛門病変の問題

クローン病でもトイレへの頻繁な往来は仕事の場面での悩みになります。急な腹痛や下痢への対応が必要なため、席を自由に離れられる職場環境かどうかは重要な選択基準です。

加えて、クローン病の患者さんに多い肛門病変(痔ろうなど)は、長時間の座位が痛みにつながることがあります。

事務仕事でずっと椅子に座っていることが逆につらい、という状況が生まれることもあり、「デスクワークなら大丈夫」とは一概に言えない部分もクローン病の特徴です。実際に痔ろう用のドーナツ型クッションを活用しながら働いている方もいます。

栄養療法を職場で続けることの難しさ

クローン病の治療として成分栄養剤を飲む栄養療法を行っている方は少なくありません。

しかし、この栄養剤は独特のにおいや味があり、職場での服用に気を遣う場合があります。デスクの引き出しに栄養剤を常備して毎日の栄養管理を続けている患者さんもいますが、「なぜ変なものを飲んでいるのか」と周囲に不思議がられることも。

治療の一環であることを説明できる関係性が、働き続けるうえで重要になります。

食事制限(脂質や食物繊維の制限など)も長期にわたることが多く、職場での昼食の選択肢が限られたり、飲み会や食事の席で気を遣ったりすることも、じわじわと精神的な負担になります。

再燃と予測困難な体調の波

クローン病でも活動期・寛解期の繰り返しによる体調の波はあります。IBDの調査では、再燃を経験した中等症以上の患者さんのうち約3人に2人が「月1回以上のペースで仕事の約束や会議をキャンセルまたは変更している」と報告されています。

予測が難しいタイミングでの体調悪化は、「仕事で迷惑をかけてしまう」という申し訳なさと直結します。症状のコントロールに苦心しながら、職場の理解を得ることにも悩み続けるという二重の負担は、精神的にも重くのしかかります。

働き続けるための工夫と対処法

食事・栄養管理を「仕事の準備」のひとつとして捉える

クローン病においては、食事管理と栄養療法の継続が体調の安定に直結します。仕事前に栄養剤を摂る、昼食に消化しやすい食品を選ぶ、食べてから時間をおいて出勤するなど、日々の食事と体調の関係を自分なりに把握しておくことが、仕事のパフォーマンス維持にもつながります。

「体調管理のための食事制限」であることを職場に伝え、弁当持参や食事の選択への理解を求めることも、長期的に働くうえでの大切な配慮のひとつです。

座位への配慮と職場環境の工夫

肛門病変がある場合、長時間の座位を避けることや、クッションを利用することが有効です。座面の硬い椅子を柔らかいものに変えてもらう、立ち仕事と座り仕事を組み合わせる、定期的に席を立てる環境をつくるといった配慮を職場に相談することも選択肢のひとつです。

「なぜそんな配慮が必要なのか」を説明しにくいと感じる方も多いですが、肛門病変はクローン病の合併症として医学的に認められているものです。主治医に「就労上の配慮に関する意見書」を書いてもらい、それをもとに職場と話し合う方法もあります。

通院・入院への備えを職場と共有しておく

クローン病は定期的な内視鏡検査や外来受診が必要であり、急な入院になるケースもあります。こうした状況をあらかじめ職場に伝えておくことで、いざというときのフォロー体制を整えてもらいやすくなります。

「急に休むかもしれない」という状況は、自分だけが知っていると余計なプレッシャーになります。直属の上司や産業医など、必要最低限の範囲でいいので、事前に共有しておくことが、長く働き続けるための安心感につながります。

「やりたい仕事にチャレンジすることをあきらめない」という視点

IBDの就労支援の現場では、「クローン病だからできない仕事がある」という固定観念を持ちすぎないことも大切だと言われています。実際に、クローン病の当事者のなかには、出版・医療・IT・教育など多種多様な分野で活躍している方が多くいます。

体調を優先しながら、自分の得意なことや興味のある方向性を大切にすること。やりたいことへのチャレンジは、病気と共に生きていくためのエネルギーにもなります。「クローン病があるから諦める」ではなく、「クローン病があっても、どうすれば実現できるかを考える」というスタンスで、選択肢を狭めすぎないことが重要です。

クローン病の方が使える支援制度と相談先

特定医療費(指定難病)助成制度

クローン病は指定難病(指定難病96)に認定されており、一定の要件を満たすことで医療費の自己負担が軽減される助成を受けられます。

薬物療法に加えて栄養療法や定期検査が長期にわたる病気だからこそ、助成制度をしっかり活用することが大切です。申請は主治医が作成する「臨床調査個人票」をもとに、都道府県の窓口を通じて行います。

障害者総合支援法による就労支援

クローン病は障害者総合支援法の対象疾病にも含まれており、障害者手帳を持っていない場合でも就労継続支援(A型・B型)や就労移行支援などの福祉サービスを利用できる場合があります。

フルタイムでの一般就労が難しい時期でも、自分のペースで社会とつながりながら働く練習ができる場として機能しています。

利用の可否や手続きについては、お住まいの市区町村の障害福祉課または相談支援センターに問い合わせてみてください。

ハローワークの難病患者就職サポーター

一部のハローワークには「難病患者就職サポーター」が配置されており、難病を抱えながら仕事を探す方に向けた専門的なサポートを受けられます。

就職活動の進め方だけでなく、面接での病気の伝え方、職場での配慮の求め方なども相談に乗ってもらえます。障害者手帳がなくても利用できる点が心強いです。

難病相談支援センター

各都道府県に設けられている難病相談支援センターでは、療養生活や就労に関する幅広い悩みを受け付けています。

大阪府には「大阪難病相談支援センター」があり、専門の相談員が対応しています。「まだ深刻な困りごとにはなっていないけど不安がある」という段階から、気軽に利用できる場所です。

医療ソーシャルワーカー(MSW)

通院先の病院に医療ソーシャルワーカーが在籍していれば、就労や生活に関する困りごとをまとめて相談できます。

利用できる制度の整理から、主治医との橋渡しまで、「相談の糸口が見つからない」という状態から一歩踏み出すきっかけになります。クローン病の治療は継続的な通院が前提になることが多いため、かかりつけの病院に相談窓口があるかどうかを確認しておくと安心です。

「自分のペースで、少しずつ前に進む」という選択肢

クローン病は発症年齢が若く、長い時間をかけて病気と付き合い続けていく必要があります。症状がある時期には「働けない自分」に焦りを感じることもあるかもしれませんが、今すぐフルタイムで働かなければならないわけではありません。

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、自分の体調やペースに合わせて作業に取り組める福祉サービスです。週に何日通うか、どんな作業をするかも柔軟に調整できるため、体調の波があるクローン病の方でも無理なく続けやすい環境です。

「外に出ること」「何かに取り組む習慣をつけること」「自分にできることを少しずつ増やしていくこと」を目標にしながら、社会とのつながりを保つ場所として活用している方も多くいます。

クローン病は障害者総合支援法の対象疾病に含まれているため、障害者手帳がなくても、医師の診断書等があれば利用できる場合があります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。

東大阪市にある「わんすてっぷ」について

東大阪市にある就労継続支援B型事業所「わんすてっぷ」では、難病をはじめ様々な背景を持つ方が、それぞれのペースで作業に取り組んでいます。

軽作業や八百屋でのレジサポート業務、ネイルの練習など、内容も多彩です。「体調が心配で続けられるか不安」「まずどんな雰囲気か見てみたい」という方も、最初は見学や体験から始めることができます。無理なく試してから、自分に合うかどうか判断できます。

クローン病を抱えながら「一歩踏み出してみたい」「今の状況を少しでも変えたい」と思っている方、まずは気軽にご連絡ください。あなたが「やってみたい」と思う気持ちを、大切にしています。

関連記事もあわせてご覧ください

クローン病と同じく患者数の多い指定難病について、それぞれ詳しく解説した記事もご用意しています。

指定難病全体の概要や支援制度については、親記事もあわせてご覧ください。

まとめ

クローン病は、10〜20代という若い時期に発症しやすく、消化管の広範な炎症・肛門病変・栄養管理の必要性・再燃の繰り返しと、働くうえでのハードルが多面的に重なる病気です。

しかし、治療法の進歩により寛解維持の可能性が広がっており、適切なサポートを受けながら自分らしく働き続けている方も増えています。

「クローン病だから」と可能性を狭めすぎず、主治医や支援機関を頼りながら、今の自分にできることを一つひとつ積み上げていくことが、長く安定して働き続けるための道になります。このページがその一歩のきっかけになれれば幸いです。

氏野 恵|サービス管理責任者

氏野 恵|サービス管理責任者

就労継続支援B型事業所「わんすてっぷ」の管理者・サービス管理責任者(兼務)。 福祉分野で7年半の実務経験を持ち、介護福祉士、強度行動障害支援者の資格を有する。 利用者さん一人ひとりの特性や気持ちを丁寧にくみ取り、やってみたい気持ちを大切にした支援を心がけている。 また、JNAネイリスト技能検定2級を取得しネイリストとして約2年間のサロンワーク経験と、福祉ネイリストとしての活動経験を持つ。支援の幅を広げる学びの一環として野菜ソムリエの資格も取得し、これまでの経験を活かしながら日々の事業所運営と支援に取り組んでいる。」

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