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全身性エリテマトーデスの特徴・働く悩み・支援・相談先まで解説

全身性エリテマトーデス(SLE)という病名は、一度聞いただけではなかなかイメージが湧きにくいかもしれません。それでも、この病気を持ちながら「どうやって仕事を続けていけばいいんだろう」と悩んでいる方は少なくないと思います。

特に患者さんの多くが20〜40代の女性であることを考えると、仕事・育児・家事といった複数の役割が重なりやすい時期での発症になりやすく、働き方をめぐる悩みは一層深くなりがちです。

このページでは、全身性エリテマトーデスという病気の特徴を整理したうえで、働くうえで生じやすい困りごと、日々の工夫、使える制度・相談先まで順番にお伝えします。

全身性エリテマトーデス(SLE)とはどんな病気か

自分の免疫が自分を攻撃する「自己免疫疾患」

全身性エリテマトーデス(英語ではSystemic Lupus Erythematosus、略してSLE)は、本来は細菌やウイルスから体を守るための免疫が、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうことで、全身に炎症が広がる自己免疫疾患です。

「Lupus(ループス)」はラテン語で「狼」を意味し、「Erythematosus(エリテマトーデス)」はギリシャ語で「赤い」を意味します。顔に現れる典型的な皮膚症状が、狼に噛まれたような赤い痕に見えることから、この名前がつきました。

日本では約5万人の患者さんがいると考えられており、特に20〜30代の若い女性に多く、男女比はおよそ1対9です。指定難病(指定難病49)にも認定されており、医療費助成の対象となっています。

発症の直接的な原因はまだ解明されていませんが、遺伝的な素因に加え、紫外線・ウイルス感染・ストレス・性ホルモンなどの環境因子が複雑に関わっていると考えられています。

症状がとにかく多彩——全身のあちこちに出る

全身性エリテマトーデスの特徴として、症状がとても多彩であることが挙げられます。

「全身性」という名前のとおり、特定の臓器だけでなく、皮膚・関節・腎臓・心臓・肺・神経・血液など、文字どおり全身に影響が及ぶことがあります。

よく知られている症状のひとつが「蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)」です。

鼻から両頬にかけて蝶が羽を広げたような形で現れる皮膚の赤みで、日光(紫外線)や外的刺激を受けて初期症状として現れやすい症状です。ただし、この症状が出ない患者さんも多く、見た目には何も変化がないように見えるケースも少なくありません。

そのほかには、発熱・全身の倦怠感・疲れやすさ・関節の痛みや腫れ・脱毛・口内炎(痛みがない場合が多い)・光線過敏症(日光に当たると症状が悪化する)などが代表的な症状として挙げられます。

重症化すると、腎臓の障害(ループス腎炎)、中枢神経や末梢神経への影響による精神症状・けいれん・脳梗塞、心臓や肺の炎症なども起こりえます。

ただし、こうした症状がすべて出るわけではなく、軽症でほとんど日常生活に支障がない方もいれば、複数の臓器に障害が及ぶ重症の方もいます。同じ病名でも、一人ひとりの状態はかなり異なります。

寛解と再燃を繰り返す慢性疾患

全身性エリテマトーデスは、症状が落ち着く「寛解期」と再び悪化する「再燃期」を繰り返しながら、長い経過をたどる慢性疾患です。

全身性エリテマトーデスを完治させることは難しいですが、ステロイド・免疫抑制薬・生物学的製剤などを組み合わせることで、症状がほとんどない寛解状態の維持をめざすことができます。

現代医療において、かつては「不治の病」とも言われていたこの病気も、治療法の進歩によって「コントロール可能な病気」へと変わりつつあります。寛解中は、病気を持っていない方と変わらない生活を送れている患者さんも増えています。

SLEと妊娠・出産について

全身性エリテマトーデスは20〜40代の女性に多い病気であるため、妊娠や出産との兼ね合いを気にされる方も多いです。以前は「妊娠は難しい」と言われることもありましたが、現在はその見方が大きく変わっています。

病気が安定した寛解の状態で、かつ妊娠・授乳への影響が少ない薬に切り替えた状態であれば、妊娠・出産は十分に可能とされています。ただし、妊娠中は病状が変化しやすいこともあるため、主治医と十分に相談しながら計画を立てることが大切です。

全身性エリテマトーデスを抱えながら働くうえでの困りごと

慢性的な疲労感がいちばんの壁になりやすい

SLEは「疲れやすい(易疲労性)」という特徴があります。これは単なる疲れではなく、炎症による身体への負荷や、ステロイドなどの薬の影響、睡眠の乱れ、貧血といった複数の要因が重なって生じるものです。

「昨日は大丈夫だったのに、今日は体が起き上がらない」という状態が突然やってくることもあり、仕事のスケジュール管理がとても難しくなります。フルタイムで働くことでエネルギーを使い果たしてしまい、家に帰ると何もできなくなる——そういった経験をされている方も多いようです。

紫外線を避けなければならない

全身性エリテマトーデスの特徴的な問題のひとつが、光線過敏症です。紫外線を浴びると発疹が現れたり、症状が悪化したりすることがあります。室内であっても紫外線は窓から入ってくるため、窓際を避けるなど注意が必要です。

これは職場環境に直接影響します。窓際の席、屋外での作業や移動が多い業務、紫外線が多く当たる場所での勤務は体調を悪化させるリスクがあり、屋外作業よりも事務職などの屋内業務が望ましいとされています。

日常的に日焼け止めを使う、長袖を着用する、帽子やUVカットのアイテムを活用するといった対策が必要になりますが、それ自体が「目立ってしまう」「なぜそうするのかを毎回説明しなければならない」という心理的な負担にもなります。

症状が「見えにくい」ために誤解されやすい

全身性エリテマトーデスは、症状が外から見えにくいことが多いため、「見た目は元気そうなのに」という誤解を受けやすい病気です。倦怠感・関節痛・頭痛・集中力の低下といった症状は、本人にしか感じられないものがほとんどです。

「ちょっと疲れやすいだけでしょ」「大げさではないか」と思われてしまうことへの恐れが、職場への開示をためらわせる理由のひとつになります。かといって何も言わずにいると、急な欠勤や通院のたびに説明が難しくなる、という板挟みの状況が生まれます。

ステロイドなどの薬による副作用

全身性エリテマトーデスの治療では、ステロイド(副腎皮質ホルモン)が使われることが多く、その副作用も仕事に影響することがあります。顔や体がむくむ「満月様顔貌(ムーンフェイス)」や体重増加、骨粗しょう症のリスク増加、感染症にかかりやすくなるといった副作用は、見た目や体力面での変化として現れます。

「薬を飲んでいるから大丈夫」と一見思われがちですが、薬による副作用も含めて日々の体調管理が必要な状態であることを、周囲に理解してもらうことが大切です。

通院・検査の頻度が高い

全身性エリテマトーデスは全身の臓器に影響が及ぶため、定期的な通院や血液検査・尿検査などが欠かせません。月に1〜2回以上の通院が必要なことも多く、その調整が仕事との兼ね合いで負担になることもあります。

特に、突然の症状悪化で緊急入院が必要になるケースもあるため、「いつでも休める環境」「急な欠勤にも対応できる職場」かどうかが、長く働き続けられるかどうかの重要な要素になります。

働き続けるための工夫と対処法

紫外線対策を「職場の配慮事項」として伝える

光線過敏症への対策は、自分でできることと、職場に協力してもらうことの両面が必要です。自分でできる対策として、日焼け止め(紫外線遮断指数の高いもの)の毎日の使用、長袖・帽子の着用、窓際から離れた席の選択といったことが挙げられます。

職場への配慮のお願いとしては、「窓際の席を避けてほしい」「屋外業務への配置を控えてほしい」「遮光カーテンの設置を相談したい」といった具体的な要望を伝えることで、理解を得やすくなります。すべてを一度に話す必要はなく、まず直属の上司や産業医に相談することから始めるのがおすすめです。

エネルギーの「配分」を意識して働く

疲労感との付き合い方で重要なのは、エネルギーを使いすぎないよう意識的に配分することです。仕事量が多い日の翌日はできるだけ軽めのスケジュールにする、昼休みに10〜15分横になれる場所を確保する、業務の優先順位を明確にして「しなくていいこと」を減らす、といった工夫が、長く働き続けるための現実的な手立てになります。

「頑張れる日に頑張りすぎて、後で寝込む」というパターンは、SLEの方が働くうえで陥りやすいサイクルです。体調の良い日ほど無理をしないことが、結果的に安定した就労につながります。

「病気を持ちながら働いている」ことを職場に知ってもらう

職場への開示は慎重に考える方が多いと思いますが、産業医や職場の上司に「過労やストレスが悪化の原因になること」「通院への配慮が必要なこと」を伝え、無理のない働き方を相談することが重要です。

病名をすべて伝える必要はないケースも多く、「自己免疫疾患の治療中で定期通院が必要」「疲れやすく、体調によって業務量の調整が必要なことがある」という説明でも、必要な配慮を求めることは可能です。主治医に「就労上の配慮が必要である旨の診断書」を作成してもらい、それを活用する方法もあります。

在宅勤務やフレックスを活用する

全身性エリテマトーデスの方にとって、在宅勤務は複数の点でメリットがあります。通勤によるエネルギー消耗を減らせること、窓際の席を自分でコントロールできること、体調が優れない時間帯に少し休めること——これらは病気の管理と仕事の両立に大きく貢献します。

フレックスタイム制や時短勤務についても、職場の制度として利用できる場合は積極的に相談してみてください。「使うと申し訳ない」と遠慮せず、制度を活用することが自分を守ることにつながります。

全身性エリテマトーデスの方が使える支援制度と相談先

特定医療費(指定難病)助成制度

全身性エリテマトーデスは指定難病(指定難病49)のため、一定の要件を満たすことで医療費の自己負担を軽減する助成が受けられます。ステロイドや免疫抑制薬など長期の服薬が続く病気だからこそ、医療費の負担軽減は大きな意味を持ちます。申請は都道府県の窓口を通じて行い、主治医が作成する「臨床調査個人票」が必要です。

障害者総合支援法による就労支援サービス

全身性エリテマトーデスは障害者総合支援法の対象疾病にも含まれており、障害者手帳を持っていない場合でも、就労継続支援(A型・B型)や就労移行支援といった福祉サービスを利用できる場合があります。

「一般就労はまだ難しいけれど、何か社会とつながりたい」「自分のペースで仕事の練習をしたい」という方に向けた場として機能しています。詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉課に問い合わせてみてください。

ハローワークの難病患者就職サポーター

一部のハローワークには「難病患者就職サポーター」が配置されており、難病を持ちながら仕事を探す方を専門的にサポートしてくれます。就職先の選び方、企業への病気の伝え方、職場での配慮の求め方など、一般的なハローワークの窓口よりも細かく相談に乗ってもらえます。障害者手帳の有無に関係なく相談できる点も心強いです。

難病相談支援センター

都道府県ごとに設置されている難病相談支援センターでは、病気に関する療養上の不安から就労の悩みまで、幅広い内容を相談できます。大阪府には「大阪難病相談支援センター」があり、専門の相談員が話を聞いてくれます。「まだ困っているというほどではないけれど、何となく不安」という段階でも、気軽に立ち寄れる場所です。

医療ソーシャルワーカー(MSW)

通院先の病院に医療ソーシャルワーカーが在籍していれば、就労や生活上の困りごとについてまとめて相談することができます。使える制度の整理や、主治医と職場の間の橋渡し的な役割も担ってくれるため、「誰に何を相談すればいいかわからない」という方にとって最初の窓口として頼りになります。

「自分のペースで、外に出ることから始める」という選択肢

全身性エリテマトーデスは症状に波があり、体調が読みにくい病気です。そのため、「いきなりフルタイムで働く」ことよりも、「まず自分の体調のリズムを整えながら社会とつながる」ことを目標にするほうが、長期的にはうまくいくことが多いです。

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、自分の状態に合わせて作業の種類や時間を調整しながら取り組める福祉サービスです。「通えるかどうか不安」「体調が悪い日はどうすればいいか」という心配も、B型の環境であればある程度融通が利きます。

全身性エリテマトーデスは障害者総合支援法の対象疾病に含まれており、障害者手帳がなくても医師の診断書などがあれば利用できる場合があります。まずはお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

東大阪市にある「わんすてっぷ」について

東大阪市にある就労継続支援B型事業所「わんすてっぷ」には、難病や様々な事情を抱えながらも、自分なりの一歩を踏み出そうとしている方が通っています。

軽作業や八百屋でのレジサポート、ネイルの練習など、無理なく取り組める作業が用意されており、「今日は少し疲れている」という日も、無理せず自分のペースで過ごせる環境です。

スタッフが一人ひとりの状態に寄り添いながらサポートするので、「久しぶりに外に出てみようかな」という小さな一歩から始めることができます。

全身性エリテマトーデスを抱えながら「働くことへの不安が大きい」「どこに相談すればいいかわからない」という方も、まず見学や体験から試してみてください。どんな状況でも、あなたが「やってみたい」と思う気持ちを大切にします。

関連記事もあわせてご覧ください

全身性エリテマトーデスと並んで患者数の多い指定難病について、それぞれ詳しく解説した記事もご用意しています。

指定難病全体の概要や支援制度については、親記事もあわせてご覧ください。

まとめ

全身性エリテマトーデスは、20〜40代の女性に多く、全身にわたる多彩な症状・疲労感・光線過敏・定期通院など、働くうえでのハードルが重なりやすい病気です。しかしその一方で、適切な治療と環境づくりによって仕事を続けている方も多く、「うまく付き合っていける病気」に変わりつつあります。

一人で抱え込まず、主治医・医療ソーシャルワーカー・支援機関に相談しながら、「今の自分に合った働き方」を少しずつ探していくことが大切です。焦らなくていいですし、完璧にできなくても大丈夫です。あなたのペースで、前に進むことを考えてみてください。

氏野 恵|サービス管理責任者

氏野 恵|サービス管理責任者

就労継続支援B型事業所「わんすてっぷ」の管理者・サービス管理責任者(兼務)。 福祉分野で7年半の実務経験を持ち、介護福祉士、強度行動障害支援者の資格を有する。 利用者さん一人ひとりの特性や気持ちを丁寧にくみ取り、やってみたい気持ちを大切にした支援を心がけている。 また、JNAネイリスト技能検定2級を取得しネイリストとして約2年間のサロンワーク経験と、福祉ネイリストとしての活動経験を持つ。支援の幅を広げる学びの一環として野菜ソムリエの資格も取得し、これまでの経験を活かしながら日々の事業所運営と支援に取り組んでいる。」

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