身体障害者手帳という言葉を耳にしたことはあっても、「自分は対象になるのかな」「申請って大変そう」「取得して実際に何が変わるの?」と、なかなか一歩を踏み出せずにいる方は少なくないのではないでしょうか。
特に、身体に障害がある中で「働きたい」「自立した生活を送りたい」と考えている方にとって、身体障害者手帳を取得するかどうかは、今後の生活や働き方に大きく関わる判断になります。
この記事では、身体障害者手帳の基本的な仕組みから、等級の考え方、取得することで得られるメリット、そして具体的な申請の流れまでを、できるだけわかりやすくまとめました。
「まずは情報を集めたい」という段階の方にも参考になる内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
身体障害者手帳とはどんな制度?
身体障害者手帳とは、身体に一定以上の障害があると認められた方に対して、都道府県・指定都市・中核市が交付する公的な手帳のことです。
身体障害者福祉法に基づく制度で、この手帳を持っていることで、税金の控除や公共交通機関の割引、障害福祉サービスの利用など、さまざまな支援制度にアクセスしやすくなります。
身体障害者手帳は、いわば「障害があることの公的な証明書」のような役割を果たしています。手帳を持っているからといって日常的に提示を求められるわけではありませんが、税金の控除を受けたり、障害者雇用枠で働いたりする際には、手帳の所持が前提となるケースがほとんどです。
ちなみに、身体障害者手帳には原則として有効期限がありません。一度取得すれば基本的にはそのまま持ち続けることができます。
ただし、障害の状態が変わる可能性がある場合には、一定期間後に再認定(再審査)を受ける必要が生じることもあります。
「手帳を取る=障害者というレッテルを貼られる」と感じてしまう方もいるかもしれませんが、手帳を持っていることを周囲に知らせる義務はありません。あくまで、ご自身が必要なときに活用できるものとして捉えていただければと思います。
身体障害者手帳の等級と対象になる障害の種類
身体障害者手帳の等級は、障害の程度に応じて1級から7級まで分けられています。数字が小さいほど障害の程度が重く、受けられる支援の範囲も広くなる傾向があります。
ただし、7級の障害は単独では手帳の交付対象にはなりません。7級に該当する障害が2つ以上重複している場合に、それぞれの等級に対応する「指数」を合算して6級以上と判定されれば、手帳が交付されるという仕組みです。
等級ごとの指数は、おおまかに以下のようになっています。
| 等級 | 指数 |
|---|---|
| 1級 | 18 |
| 2級 | 11 |
| 3級 | 7 |
| 4級 | 4 |
| 5級 | 2 |
| 6級 | 1 |
| 7級 | 0.5 |
たとえば、4級(指数4)の障害が2つある場合、合計指数は8となり、3級(合計指数7〜10)に該当する可能性があります。障害が複数ある方は、個々の等級だけでなく合算による総合等級も確認してみてください。
等級の判定は、自分で「この等級が良い」と希望できるものではなく、都道府県や指定都市・中核市が指定した医師(指定医)による診断書をもとに、医学的な基準に沿って審査・決定されます。
対象となる障害の種類
身体障害者手帳の交付対象となる障害は、大きく分けると以下の種類があります。
- 視覚障害(見えにくい、見えないなど)
- 聴覚・平衡機能の障害(聞こえにくい、バランスが保ちにくいなど)
- 音声・言語・そしゃく機能の障害(話しにくい、飲み込みにくいなど)
- 肢体不自由(手足や体幹の機能に障害がある状態)
- 内部障害(心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・肝臓・免疫の機能障害)
それぞれの障害ごとに等級の基準は異なります。たとえば同じ4級でも、視覚障害と肢体不自由ではまったく別の判定基準が適用されます。「自分はどの等級に当てはまるのだろう」と気になった方は、まず市区町村の障害福祉窓口や指定医に相談してみるのがよいでしょう。
また、内部障害のように外見からはわかりにくい障害も手帳の対象になります。「見た目にはわからないから対象外だろう」と思い込んでいる方もいますが、心臓や腎臓、肝臓などの内臓疾患であっても、一定の基準を満たせば手帳を取得できる場合があります。
身体障害者手帳を取得するメリット
「手帳を取っても、自分の生活は変わらないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、身体障害者手帳を持つことで利用できる支援やサービスは、実は想像以上に幅広いです。ここでは、代表的なメリットをご紹介します。
税金の負担が軽くなる
身体障害者手帳を持っている方は、所得税や住民税の障害者控除を受けることができます。控除額は等級によって異なり、1級・2級に該当する「特別障害者」の場合はより大きな控除が適用されます。
確定申告や年末調整のタイミングで手続きを行えば、年間の税負担を抑えられる可能性があります。また、障害のある方を扶養している家族が控除を受けられるケースもあるため、ご家族にも関わるメリットといえます。
さらに、障害の種類や等級によっては、自動車税・軽自動車税の減免が受けられる場合もあります。通院や通勤で車を使う方にとっては見逃せないポイントです。
公共交通機関や施設の割引が利用できる
身体障害者手帳を提示すると、JRの運賃が割引になる場合があります。第1種の方は本人と介護者の両方が5割引、第2種の方は本人のみが5割引となるのが一般的です(片道100kmを超える区間での利用など、一定の条件があります)。
そのほかにも、バス料金やタクシー料金の割引、美術館・博物館などの公共施設の入場料割引、NHK受信料の減免、携帯電話の障害者割引プランなど、利用できるサービスは多岐にわたります。
対象となるサービスは障害の種類・等級や自治体・事業者によって異なるため、「自分の場合はどれが使えるのか」をお住まいの地域の窓口で確認しておくと、取りこぼしなく活用できます。
医療費の助成が受けられる場合がある
身体障害の状態を改善・軽減するための医療を受ける際、「自立支援医療(更生医療)」という制度を利用すると、医療費の自己負担が軽くなる場合があります。対象となる医療や手術は限定されていますが、該当する方にとっては大きな経済的メリットです。
また、自治体独自の医療費助成制度が設けられていることもあります。手帳の等級によっては、通院費や入院費の一部が助成されるケースもありますので、申請前に窓口で情報を確認しておくことをおすすめします。
障害者雇用枠で働くという選択肢が広がる
身体障害者手帳を持っていると、障害者雇用促進法に基づいた「障害者雇用枠」の求人に応募できるようになります。これは、手帳を取得する大きなメリットの一つです。
障害者雇用枠では、障害に対する配慮(通院時間の確保、業務量の調整、バリアフリーの環境整備など)を受けやすくなります。「働きたい気持ちはあるけれど、一般的な雇用だと体力面や環境面で不安がある」と感じている方にとって、大きな選択肢になるのではないでしょうか。
障害者雇用枠への応募には手帳の所持が条件となるため、就職・転職を視野に入れている方は早めの取得を検討しておくと、いざというときにスムーズに動くことができます。
福祉サービスや補装具の支給が受けられる
車いすや義肢、補聴器などの補装具を購入・修理する費用について、公費による支給を受けられる制度があります。日常生活をサポートする用具の給付や貸与も、手帳を持っていることが前提になるケースが多いです。
そのほか、居宅介護(ホームヘルプ)サービスや移動支援、相談支援サービスなど、障害者総合支援法に基づくさまざまな福祉サービスを利用する際にも、手帳があると手続きがスムーズに進みます。
雇用保険の給付が手厚くなることもある
あまり知られていませんが、身体障害者手帳を持っている方が離職した場合、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の給付日数が一般の方よりも多くなる場合があります。就職活動中の経済的な支えとして、知っておいて損はない制度です。
身体障害者手帳の申請方法と流れ
「手帳を取りたいと思ったけど、何からすればいいの?」という方に向けて、一般的な申請の流れをご紹介します。自治体ごとに細かな違いはありますが、大まかなステップは全国共通です。
まずは市区町村の障害福祉窓口へ相談する
最初の一歩は、お住まいの市区町村にある障害福祉課や福祉事務所に相談に行くことです。窓口では、手帳の申請に必要な書類について案内してもらえるほか、自分が申請の対象になりそうかどうかも相談できます。
「いきなり病院に行かなきゃ」と思う方もいますが、まずは窓口に足を運ぶほうがスムーズです。診断書を書いてもらう「指定医」の情報も、窓口で教えてもらうことができます。
指定医の診断書・意見書を取得する
手帳の申請には、都道府県知事や指定都市市長が指定した医師(指定医)が作成する「診断書・意見書」が必要です。
普段通っている病院の主治医が指定医であれば、そちらで対応してもらえます。指定医でない場合は、窓口で紹介してもらうことも可能です。
診断書の作成費用は自己負担で、おおむね3,000円〜5,000円程度が目安です。自治体によっては費用の一部を助成してくれる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
必要書類を揃えて窓口に提出する
一般的に必要とされる書類は以下のとおりです。
- 身体障害者手帳交付申請書(窓口で入手できます)
- 指定医による診断書・意見書
- 顔写真(縦4cm×横3cm程度。自治体により異なります)
- マイナンバーが確認できる書類
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
書類が揃ったら、障害福祉窓口に提出します。郵送で受け付けている自治体もありますが、書類に不備があった場合のやりとりを考えると、可能であれば直接持参するのがおすすめです。
申請そのものに費用はかかりません。
審査を経て手帳が交付される
申請書類が受理されると、審査機関で審査が行われます。障害の程度が認定基準に該当すると判断されれば、身体障害者手帳が交付されます。
交付までにかかる期間は、一般的に1か月〜4か月程度です。申請内容や自治体の状況によって前後しますので、「すぐにもらえるもの」と思わず、ある程度余裕を持って申請することが大切です。
なお、現在の障害の状態が以前よりも重くなった場合には、等級の変更(再交付)を申請することもできます。気になる方は、改めて障害福祉窓口に相談してみてください。
手帳を取得したあとの「働く」を考える
身体障害者手帳を取得した方の中には、「次は仕事のことを考えたい」という方も多いのではないでしょうか。身体に障害があっても、支援を受けながら自分に合った形で働く道はいくつもあります。
障害者雇用での就職を目指す
先ほども触れましたが、手帳を持っていると障害者雇用枠での求人に応募できるようになります。ハローワークには障害者専門の相談窓口があり、一人ひとりの状況に合わせた求人紹介や就職活動のサポートを受けられます。
「いきなりフルタイムで働くのは不安」という方は、就労移行支援事業所で仕事に必要なスキルを身につけたり、面接の練習をしたりと、段階的に準備を進めていく方法もあります。
就労継続支援で自分のペースから始める
一般的な雇用がすぐには難しいと感じている方には、就労継続支援A型やB型という福祉サービスがあります。
A型は雇用契約を結んで働く形ですが、B型は雇用契約なしで自分の体調やペースに合わせて作業に取り組むことができます。「まずは働くことに少しずつ慣れていきたい」「体調に波があるから無理なく続けたい」という方には、B型が向いていることが多いです。
就労継続支援B型事業所では、軽作業や生産活動を通じて「働く」経験を積みながら、生活リズムを整えたり、人との関わりを持ったりすることができます。見学や体験を受け付けている事業所も多いので、まずは気になったところに相談してみるのが一番の近道です。
取得を迷っている方へ伝えたいこと
身体障害者手帳の取得に対して、「障害者と認定されることに抵抗がある」「取っても使わないかもしれない」と感じている方もいるかもしれません。その気持ちは、決しておかしなことではありません。
ただ、知っておいていただきたいのは、手帳を持っているからといって周囲に知らせる義務はないということです。
自分から伝えない限り、手帳の存在が他の人にわかることは基本的にありません。それに、手帳が不要になったときは返還することもできます。
一方で、手帳を持っていないことで、本来受けられるはずだった支援やサービスを逃してしまうのは、もったいない話です。「とりあえず取っておいて、必要なときに活用する」という考え方も十分にありだと思います。
迷っている方は、まずは市区町村の障害福祉窓口に足を運んで、相談だけしてみてはいかがでしょうか。
相談したからといって、すぐに申請しなければならないわけではありません。窓口のスタッフと話すことで、自分に必要な情報が見えてくることもあるはずです。
体障害についてもっと詳しく知りたい方へ
身体障害にはさまざまな種類があり、それぞれの障害特性や利用できる支援の内容も異なります。
この記事では身体障害者手帳の全体像をお伝えしましたが、もっと具体的なテーマが気になる方のために、関連する記事をご用意しています。
気になるテーマがあれば、ぜひあわせてご覧ください。
- 身体障害とは?種類・等級・支援・相談先から働き方まで徹底解説(親記事)
- 身体障害がある方の就労とは?働き方の選択肢をまるごと解説(準備中)
- 内部障害とは?「見えない障害」の特性と使える支援制度(準備中)
- 聴覚障害とは?特徴や就労での困りごと、相談窓口を解説(準備中)
- 視覚障害とは?種類・等級・サポート制度をやさしく解説(準備中)
- 肢体不自由とは?症状や日常生活への影響、使える制度を解説(準備中)
東大阪市で支援や相談先をお探しの方へ
ここまで記事をお読みいただき、ありがとうございます。
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身体障害者手帳の取得も、その先の働き方を考えることも、焦って決める必要はありません。大切なのは、まず情報を集めて、自分に合った選択肢を一つずつ見つけていくことです。
「わんすてっぷ」は、そんな一歩を一緒に考える場所でありたいと思っています。
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