身体障害という言葉を聞いたとき、多くの方は車いすを利用している姿や、白い杖を持っている姿を想像されるかもしれません。
しかし、身体障害の中には、外見からは全く分からない「内部障害」と呼ばれるものがあります。心臓や腎臓、呼吸器といった体の内側の臓器に障害がある状態で、その特性から「見えない障害」とも称されます。
内部障害を持つ方は、見た目には健康そうに見えるため、周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解されたり、電車で優先座席に座っているだけで冷ややかな視線を浴びたりすることもあります。
特に「働く」という場面においては、疲れやすさや通院の必要性、食事制限など、目に見えない多くの困難を抱えながら、一人で悩み続けている方が少なくありません。
この記事では、内部障害の基本的な定義から、その特性ゆえの困りごと、そして自分らしく働くために活用できる支援制度や相談窓口について詳しく解説します。あなたが抱える「見えない辛さ」を少しでも軽くし、安心して社会とつながるためのヒントとしてお役立てください。
内部障害とは?「見えない障害」と呼ばれる理由と種類
内部障害とは、身体障害者福祉法によって定められた、体の内部にある臓器の機能に障害がある状態を指します。具体的には、以下の7つの障害が「内部障害」として分類されています。
| 障害の種類 | 主な症状と生活への影響 |
| 心臓機能障害 | 心臓のポンプ機能が低下し、動悸や息切れ、疲れやすさが生じます。重度の場合はペースメーカーの植え込みが必要になることもあります。 |
| 腎臓機能障害 | 腎臓が老廃物を排出できなくなり、むくみや倦怠感が現れます。進行すると人工透析が必要になり、週に数回、数時間の通院が欠かせなくなります。 |
| 呼吸器機能障害 | 肺の機能が低下し、少しの動作でも息苦しさを感じます。外出時に酸素ボンベを携帯する「在宅酸素療法」を行う方もいます。 |
| 膀胱・直腸機能障害 | 排泄のコントロールが難しくなり、人工肛門(ストーマ)や人工膀胱を造設する場合があります。装具の管理や衛生面での配慮が必要です。 |
| 小腸機能障害 | 食べ物の消化・吸収が十分にできず、栄養不足や下痢を起こしやすくなります。中心静脈栄養などの特別な栄養管理が必要な場合もあります。 |
| ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害 | ウイルスによって免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。継続的な服薬管理と、体調変化への注意が求められます。 |
| 肝臓機能障害 | 肝臓の機能が低下し、強い倦怠感や黄疸、腹水などが現れます。疲れやすく、安静が必要な場面が多くなります。 |
内部障害が「見えない障害」と呼ばれる最大の理由は、その症状が体の内側に隠れているため、パッと見ただけでは障害があることに気づかれにくい点にあります。この「外見と実態のギャップ」こそが、内部障害を持つ方が社会生活や就労において最も苦しむ要因の一つとなっています。
内部障害の方が抱える特有の「特性」と日常生活・就労での悩み
内部障害の特性は、障害の種類によって異なりますが、共通して見られる大きな特徴がいくつかあります。これらを正しく理解することは、自分自身の体調管理だけでなく、周囲に配慮を求める際にも非常に重要です。
圧倒的な「疲れやすさ」と持久力の低下
内部障害を持つ方の多くが直面するのが、激しい倦怠感と疲れやすさです。健康な人にとっては当たり前の「通勤」「階段の上り下り」「数時間のデスクワーク」であっても、内部障害がある方にとっては、マラソンを走っているかのような大きな身体的負担になることがあります。
この疲れやすさは、単なる「体力のなさ」ではなく、臓器の機能低下によって体内のエネルギー効率が悪くなっているために起こります。そのため、十分な睡眠をとっても疲れが取れにくかったり、午後になると急激に体調が崩れたりすることも珍しくありません。
外見からは分からないことによる「誤解」の恐怖
「見た目は元気そうなのに、なぜそんなに休むのか」「若いのに優先座席に座るなんて」といった周囲の無理解な言葉や視線は、内部障害を持つ方の心を深く傷つけます。
職場においても、「見えない障害」ゆえに適切な配慮が得られず、無理をして業務をこなした結果、症状が悪化してしまうという悪循環に陥ることがあります。
また、「自分の辛さを説明しても信じてもらえないのではないか」という不安から、障害を隠して働く(クローズ就労)を選択し、さらに精神的に追い詰められてしまうケースも少なくありません。
厳格な「自己管理」と「通院」の必要性
内部障害を持つ方にとって、日々の生活は治療の一部でもあります。
- 定期的な通院:人工透析や定期検査など、平日の日中に通院しなければならない場面が多くあります。
- 食事制限・水分制限:塩分やタンパク質の制限、あるいはこまめな水分補給など、厳格な管理が求められます。
- 感染症への過敏な反応:免疫力が低下している場合、風邪やインフルエンザが重症化しやすいため、人混みを避けたり、衛生管理を徹底したりする必要があります。
これらの管理を怠ると命に関わることもあるため、内部障害を持つ方は常に自分の体調と向き合い、緊張感を持って生活しています。
就労における具体的な「困りごと」と解決のための工夫
働く意欲があっても、一般的な職場環境では内部障害の特性に対応しきれないことがあります。ここでは、就労で直面しやすい具体的な困りごとと、それを解消するための工夫について考えます。
通勤と勤務形態のハードル
満員電車での通勤は、内部障害を持つ方にとって最も過酷な時間の一つです。長時間の立ちっぱなしや、人混みによる圧迫は、心臓や呼吸器に大きな負担をかけます。
- 解決の工夫:時差出勤やテレワーク(在宅勤務)の活用を会社に相談しましょう。また、通勤経路を工夫して、始発駅から座って通えるルートを探すことも有効です。
- ヘルプマークの活用:カバンなどに「ヘルプマーク」を付けることで、外見からは分からない援助や配慮が必要であることを周囲に知らせることができます。
職場環境と業務内容のミスマッチ
職場の温度設定や、重い荷物の運搬、長時間の会議などは、内部障害の症状を悪化させる要因となります。
- 解決の工夫:自分の座席を空調の風が直接当たらない場所に変えてもらう、あるいは休憩室に近い場所に配置してもらうなどの配慮を求めましょう。
- 重労働の回避:心臓や肺に負担がかかる力仕事は避け、事務作業やPC作業など、身体的負荷の少ない業務への転換を相談することが大切です。
急な体調不良への対応
内部障害は、天候や気圧の変化、ストレスなどによって、急激に体調が悪化することがあります。
解決の工夫:あらかじめ「体調が悪くなったときのサイン」や「緊急時の連絡先・対応方法」を上司や同僚に伝えておきましょう。また、短時間勤務や、体調に合わせて休憩を細かく取れるような柔軟な働き方を提案することも一つの手です。
内部障害の方が受けられる「支援」と相談先
一人で抱え込まず、社会的な支援制度や専門の相談窓口を積極的に活用しましょう。内部障害を持つ方が利用できる主な制度をまとめました。
経済的な負担を軽減する支援制度
内部障害は長期にわたる治療が必要なことが多いため、医療費や生活費のサポートを受けることが可能です。
| 制度名 | 内容の概要 |
| 自立支援医療(更生医療) | 障害の状態を軽減するための手術や治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。 |
| 障害年金 | 病気やけがで生活や仕事に制限が出た場合に支給されます。内部障害の等級や納付状況に応じて受給できる可能性があります。 |
| 所得税・住民税の減免 | 身体障害者手帳を持っていると、本人や扶養家族の税金が軽減される「障害者控除」を受けられます。 |
| 公共料金の割引 | 自治体によりますが、水道料金の減免や、公共交通機関の運賃割引などが受けられる場合があります。 |
働くための相談窓口
「自分にできる仕事があるのか不安」「職場にどう伝えればいいか分からない」というときは、以下の機関に相談してみてください。
- ハローワーク(障害者専用窓口):専門の相談員が、内部障害の特性を考慮した求人の紹介や、面接の同行などを行ってくれます。
- 障害者就業・生活支援センター:就職だけでなく、生活面での悩み(通院や家計など)も一括して相談できる心強い味方です。
- 地域障害者職業センター:より専門的な職業評価や、職場に適応するための「ジョブコーチ支援」などを受けることができます。
内部障害者が職場で活躍するための「合理的配慮」と「周囲の接し方」
内部障害を持つ方がその能力を最大限に発揮するためには、職場側の理解と「合理的配慮」が欠かせません。ここでは、具体的にどのような配慮が有効か、また周囲の同僚がどのように接すればよいかを深掘りします。
職場に求めるべき具体的な配慮の例
障害者雇用促進法により、企業には障害者に対する合理的配慮の提供が義務付けられています。内部障害の場合、以下のような配慮が一般的です。
1.休憩時間の柔軟な設定:疲れを感じたときに、短時間の休息をこまめに取れるようにする。
2.通院日の確保:人工透析や定期検診のために、特定の曜日や時間帯の休暇・早退を認める。
3.環境の整備:ストーマ(人工肛門・人工膀胱)を利用している場合、多目的トイレの使用や、装具を交換・保管できるスペースを確保する。
4.業務量の調整:残業を免除する、あるいは締め切りの設定を柔軟にするなど、精神的・身体的プレッシャーを軽減する。
周囲の同僚ができる「優しい配慮」
内部障害を持つ同僚と一緒に働く際、最も大切なのは「目に見えない辛さがあること」を忘れないことです。
- 「大丈夫?」と声をかける:顔色が悪いときや、動作が重そうなときは、無理をさせずに声をかけましょう。
- 重い荷物などのサポート:本人が言い出しにくい場合もあるため、「これ、運びましょうか?」と自然に手を貸すことが大きな助けになります。
- プライバシーへの配慮:障害の内容をどこまで周囲に明かすかは本人の自由です。無理に聞き出そうとせず、本人が話してくれた範囲でサポートする姿勢が大切です。
内部障害を持ちながら働く方の「成功事例」と「心の持ち方」
実際に内部障害を抱えながら、自分に合った働き方を見つけている方の事例を紹介します。
事例1:腎臓機能障害(人工透析)を抱えながら事務職で働くCさん
Cさんは、週3回の人工透析が必要です。以前の職場では理解が得られず退職しましたが、現在は障害者雇用枠で、透析のある日は15時に退社できる条件で働いています。
「最初は早く帰ることに罪悪感がありましたが、その分、勤務時間内は集中して業務をこなすことで、会社からも信頼されています。自分の体調を正直に伝え、理解してくれる環境を選ぶことが、長く続ける秘訣だと感じています」
事例2:心臓機能障害で疲れやすさを抱えるDさん
Dさんは、長時間の立ち仕事が難しくなり、就労支援事業所を通じてPCスキルを習得しました。現在は、体調に合わせて週3日から通える職場で、データ入力の仕事をしています。
「『見えない障害』だからこそ、自分で自分の限界を決めつけず、まずはできることから始めることが大切だと思いました。支援員さんと一緒に、自分に合うペースを探せたのが大きかったです」
心の健康を保つために
内部障害を持つ方は、周囲に気を使って無理をしてしまいがちです。しかし、あなたの体は、あなたにしか守れません。
- 「できないこと」を認める勇気:すべてを完璧にこなそうとせず、助けを求めることは、プロフェッショナルとしての責任でもあります。
- 自分を褒める習慣:病気と向き合いながら、今日一日を過ごしたこと自体が素晴らしいことです。小さな達成感を積み重ねていきましょう。
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「働きたいけれど、体力が続くか不安」「自分の障害を理解してくれる場所があるだろうか」――そんな悩みを抱えている東大阪近郊の皆様へ。
就労継続支援B型事業所「わんすてっぷ」では、内部障害を含む身体障害を持つ方々が、それぞれのペースで「働く」という一歩を踏み出せるようサポートしています。
「わんすてっぷ」が提供する安心の環境
私たちは、内部障害特有の「疲れやすさ」や「通院の必要性」を十分に理解しています。
- 柔軟な通所スタイル:週1日から、あるいは1日1時間からでも大丈夫です。あなたの体調に合わせて、無理のないスケジュールを一緒に考えます。
- 休憩スペースの完備:疲れを感じたときに、すぐに横になったり休んだりできるスペースを用意しています。
- 専門スタッフによる相談体制:サービス管理責任者をはじめとするスタッフが、体調面や生活面、将来の不安について、いつでも親身に相談に乗ります。
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「わんすてっぷ」での活動は、決して無理を強いるものではありません。軽作業やPC作業など、座ってできる業務を中心に、あなたの「得意」や「好き」を見つけるお手伝いをします。
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まとめ
内部障害は、外見からは見えないからこそ、本人にしか分からない苦しみや不安が伴います。しかし、その「見えない障害」を正しく理解し、適切な支援制度や相談窓口を活用することで、社会の中で自分らしく輝く道は必ず開けます。
大切なのは、一人で抱え込み、自分を追い詰めないことです。
あなたが抱える困難は、決してあなたのせいではありません。社会には、あなたを支えるための多くの手があります。
もし今、将来への不安で立ち止まっているなら、まずは身近な支援機関や、私たち「わんすてっぷ」のような場所に相談してみてください。
あなたの「見えない辛さ」を分かち合い、共に歩んでくれる仲間がここにいます。一歩踏み出す勇気が、あなたの明日をより明るいものに変えていくはずです。
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